起立性調節障害(OD)についての作文がコンテストで賞を受賞

 

この度、起立性調節障害の患者さんで中学3年生の方が作文コンテストで賞をいただいたというお知らせがありました。

交流会に参加された保護者の方のご了解を得て掲載させていただくことになりました。


  「起立性調節障害」を知っていますか

 

 「起立性調節障害(OD)」、この言葉を聞いたことがある人はどのくらいいるだろうか。

 中学一年生の二学期が始まって間もなく、私は突然、強い吐き気と頭痛に襲われた。布団から起き上がることすら困難な辛い日々がその後ずっと続いた。体調不良のまま四か月後に、三つ目の病院の検査の結果、「OD」と診断され、私は初めてこの病気を知った。

 急激な体の成長に伴い自律神経が不安定になる思春期に多い体の病気で、軽症を含めれば中学生全体の一割が該当するとの研究結果もある。

 健康な人は、急に立ち上がったり、長い間立っていても自律神経の働きで、立ち上がる→下半身の血管が収縮する→血流が上半身に押し上げられる→体中に血液が循環する。

 しかし、ODの場合は自律神経の乱れのために、立ち上がる→下半身の血管が収縮できない→血液が下半身に溜まる→脳が血液不足→立ちくらみ・脳貧血、ということが起こってしまう。患者の大半は、成人すると体と自律神経のバランスが整い、症状が出なくなるようだ。治療法は、まだ確立されていない。

 人により、程度・症状は様々なのが特徴で、私の場合は朝に起きられない、立ちくらみ、全身倦怠感、食欲不振、動悸、頭痛、集中力低下が現れた。現在は回復傾向中なので、幸いこの作文を書くことができる。

 どうも私は重症だったようだ。寝たきりの時期もあり、一年以上、学校はもちろん、ほとんど外出ができなかった。

 朝、起きたくてもだるくて起きられず、学校へ行きたくても行けず、友達と話したくても話せず、大好きなバレー部の活動にも参加できず、心身共に辛かった。正直、本当に弱っていて当時の記憶はあまりない。ただ、やっと夕方に起きられて遅く登校したときに、バレー部顧問の先生と二人きりでやったパス練習は忘れることができない。たまにLINEが友達から届いたことにも、私は救われた。とても嬉しかった。

 徐々に体調が上向きになってきた中学校二年生の三学期に、負担の大きい電車通学をやめて近くの中学校に転校した。新しい担任の先生が事前に級友に病気について説明してくれ、皆も理解してくれた。体調が悪くなったとき、いつも心配してくれた。おかげで安心して学校に通い、朝から夕まで普通の学校生活が送れるようになった。部活でも、バレーボールをすることはまだできないので、マネージャーとしてチームの一員に迎えてもらった。私は日々、笑顔で充実した生活を送れている。感謝の気持ちでいっぱいだ。

 一方で、同じ病気の子供が周囲の無知・無理解によって大変辛く、苦しい思いをしているということを聞いた。

 学校を休むと「サボっている。」といじめられてしまったり、厳しい部活では「根性が足りない。」と言われ、朝に起きられないときは「気合いだ。」と親にしかられるそうだ。体がだるくて言うことを聞いてくれないのがODである。さらにストレスが病状を悪化させてしまうそうだ。彼等の周囲の人々にODについての知識・情報があれば良かったのに。胸が痛む。

 翻えせば、私も知識がなく理解不足のせいで、弱っている人々に気が付いていないかもしれない。

 私は幸い周囲の理解があり、回復傾向の今は時々肉体的に辛いが、毎日笑って過ごせている。しかし、世の中のOD患者の中には周囲の理解が足りず、心身共に苦しんでいる人が大勢いる。そのような思いをする人がいなくなって欲しいので、まだ中学生の私には難しいが、高校・大学生になったらSNSを利用してODの情報を拡散したい。医療の世界でもっと知られれば、病気のデータが増え治療法が確立される可能性があると聞いた。世間に知られれば、ODが原因になっているいじめがなくなるかもしれない。私はその日が来るまで尽力したい。

 ODだけでなく、立場が弱い人達のことを正しく理解できたら、その人達の力になれる。救うことができる。世界中の人々の人権を守るには「正しい理解」が大切だと、私は思う。